コーヒーの魅力を語ることにおいて、「香り」の要素は欠かすことができません。一般的にコーヒーの「香り」は、どれだけ強く感じることができるか、その「強さ」を問われます。
焙煎の鮮度を重要視する理由のひとつに「香り」があります。焙煎の鮮度が古くなると、その銘柄が発する「香り」の強さはどうしても弱まります。
焙煎の鮮度が新しいとき、コーヒーは豆の内部から炭酸ガスを吹き出している状態です。この炭酸ガスがコーヒーの「香り」のもとです。呼吸のように豆の内部から「香り」が発しているからこそ、濃厚な「香り」を感じることができるわけです。
ところが焙煎の鮮度が古くなると、豆の内部からの炭酸ガスの放出がなくなります。こうなるとその豆から感じることができる「香り」は、その豆の残り香だけとなります。
もうひとつ強い「香り」を楽しむということを考えたとき、豆のまま保存しておき飲むつどに粉に挽くという条件は、はずすことができません。コーヒーは粉に挽いたときその「香り」の8割以上を空気中に放出します。また豆から粉に挽けば空気に触れる表面積は豆の状態よりどうしても広くなります。
仮に世界一高い品質を持つ銘柄があったとしても、焙煎の鮮度が古くなりさらにそれが粉に挽かれた状態で長時間放置されたのであれば、その銘柄の世界一の持ち味はもはや存在しません。
「香り」が失われても味に関する評価はさほど変わらないのではないか、と以前会員さまよりご質問いただいたことがありますが、それは違います。風味という言葉があるように味を鑑定する際、「香り」は大きく左右します。特に素材の持ち味を生かす料理は「香り」がなければ、その味の魅力を語ることができません。
しかし「香り」という感覚はむずかしい。人間の「香り」に関する評価は、個人差が大きい。同じ「香り」であってもある人は強く感じ、別の人はそれほど強く感じることができないということはよくある話です。
また人間の嗅覚は順応性が高い機能でもあります。たとえば最初その「香り」をはっきりと認知しても、一定時間が経過すれば嗅覚はその「香り」の感じ方を抑えてしまいます。
くわえて「香り」を発する成分も多ければ多いほどいいというわけでもありません。種類によってはかすかに感じているときはプラス評価される「香り」であっても、その「香り」が強く感じられるとマイナス評価とされるものもあります。
コーヒーの「香り」は約800種類ほどの「香り」の成分が折り重なって作りだされています。数多くあるコーヒーの「香り」を言葉にしてみると
■チョコレートのような
■カラメルのような
■花の香りのついたシロップのような
■柑橘類を思わせるような
■ローストナッツを思わせるような
■トーストのような
■バラの花のような
■ワインのような
という言葉が例にあげられます。
ひとつの評価基準にだけにとらわれることは、その銘柄の魅力をみあやまりますし、自由ではありません。銘柄を鑑定することにおいても、いろいろな角度があります。
口にする前にその銘柄の「香り」を感じてみる。そのとき香りの強さとともに、どれだけの種類の「香り」をその銘柄が感じさせてくれるのか?コーヒーの「香り」を強さとともに「香り」の種類を意識することで、お手元の銘柄を、より一段高いレベルで楽しむができるはずです。